性格検査は、被験者の人格的特性を明らかにする目的で行うもので、質問紙法と投映法に分かれます。ここでは心理測定という立場から若干突っ込んだ話をしましょう。
まず、何かを知りたいとき、そのアプローチには他者評価と自己評価の2つがあります。この他者評価の代表が「面接法」で、非構造化面接、半構造化面接、構造化面接の3つ、また、自己評価の代表として、質問紙法があげられます。
たとえば、学校や会社の面接は、非構造化面接です。質問の内容やその答えはそのときの状況によるため、面接者の主観が判断や決定に大きく影響します。
これに対して、質問をあらかじめ決めておき、ただそれに答えるだけの方法のことを、構造化面接といいます。相手が誰でも同じ質問、順番ですので、高い客観性と、主観が入らないという利点があります。反面、最初に決めたことしか聞けません。質問紙法はこの構造化面接の質問をあらかじめ紙にまとめ、自分で答えられるようにしたものです。
両方の中間、つまり、質問を大雑把に決めておく方法が半構造化面接です。面接者は状況に応じた質問が出来るため、さまざまな情報を聞き出すことができ、病院の診察はこれにあたります。
それぞれの方法は単純に考えても、非構造化面接が一番自由に質問でき、逆に構造化面接や質問紙法は自由でないことがわかります。
これはなにを調べたいのか、それを考えるときに非常に重要です。例えば、何か仮説を作るときに、構造化面接のような自由度の低いものを用いるのは適切ではありません。いろいろなことを聞き出してそこから絞り込む、というのが一般的なパターンだからです。
逆に、この仮説が正しいのかどうか、それを確かめるときに、自由度が高い非構造化面接を用いるのも不適切です。このように心理検査をするときにはどの方法が一番適した方法なのか、それをよく考えなければなりません。
一般に、投映法は構造化面接です。力動的にヒトを見ることを前提に、無意識の領域、つまり深層心理を調べるために用いられます。検査方法の特殊さゆえに、どういう検査なのか被験者にはなかなか見破られません。結果、非常に公正な答えが得られますが、その分、面接者に多くの知識と経験が要求されます。ちなみに、知的能力や精神症状の診断などにも応用されます。
ここで、投映法の代表的な例としてロールシャッハテスト(以下、ロ・テスト)を取り上げてみましょう。ロ・テストは、10枚のインクのしみを見せて、なにを見たか(反応内容)、どこを見たか(反応領域)、どうしてそう見たか(反応決定因)を元に性格を解釈する検査です。
テストに使われるインクのしみは世界で共通です。また、反応に対する解釈の仕方も、すべてマニュアルで決められています。面接者はこれに従ってテストを実施しなければなりません。この点において、ロ・テストは構造化面接です。
具体的な解釈を考えてみましょう。例えば、被験者の無意識の世界を知りたいなら、反応決定因を注目するよう求められます。このとき、人間の運動を見る「運動反応」と、絵の色を手がかり(カラー図版もあるから)として答える「色彩反応」に注目すると、4つの性格類型が導けます。
色彩反応 | |||
多 | 少 | ||
運動 反応 |
多 | 等価型 (17%) |
運動型 (62%) |
少 | 色彩型 (21%) |
両貧型 (2%) |
この分類は、まさに内面を表す尺度となります。たとえば、色彩反応も多く、運動反応も多いという人は「等価型」であり、バランスが取れた性格ですが、逆に両方とも少ないと、精神内容が空虚であり、「両貧型」だと判断されます。
一般には「運動型」がよく見られます。内面的生活は豊かで、想像力があるとされ、内向的です。この正反対に位置する「色彩型」は、外向的であり、感情体験は豊かで、刺激感受性が高いとされます。
このようロ・テストでは、構造化面接的に人格を解釈していきます。
ロ・テスト以外にも、あいまいな絵を見せてどう答えるか見るTAT(Thematic Apperception Test. 主題統覚テスト)や、欲求不満が発生するような場面の絵を見せて、それにどう対応するか見るP-Fスタディ(Picture-Frastration study test. 絵画欲求不満場面テスト)などが投映法です。どれも構造化面接で、そのため習熟には数多くの経験が必要です。
これに対して同じ構造化面接が元でも、質問紙法は誰でも行えます。例えば、120項目から、12の性格特性を判定するYG性格検査(矢田部−ギルフォード性格検査法)や、187項目の答えから、因子分析に基づく16の性格に分類する16P-F(16 Personality Factor question. 16人格因子質問紙)などがこれにあたります。
YGのテストサンプルを見てください。
Q: 人の中にいてもふと寂しくなることがある。 × △ ○
Q: 人と広く付き合うのが好きである。 × △ ○
最初の問いは抑うつ性を、次は外向性を示します。このように非常にわかりやすい文章のため、少し深読みすれば、質問の意図が読み取れてしまいます。質問紙法は常にこの点に注意が必要で、この問題を解決するために、被験者の受検態度を測る「うその尺度(Lie Scale)」を入れたり、質問者が項目を読み上げ、被験者に考える隙を与えないなど、工夫を凝らした施行をする必要があります。
それでも質問の意図が読み取られてしまえば、答えを捻じ曲げることは可能ですから、あくまで判断の補助材料として考えたほうがよいかもしれません。
また、自分の意識しているものしか答えに浮かんでこないため、それより先の無意識の世界は見えてこないという問題もあります。このため、普通は投映法と質問紙法を組み合わせて用い(テストバッテリーという)、人格の理解をさらに深くするようにします。
このように性格検査は非常に施行が難しいものから、比較的簡単なものまで、多数あります。また、例えば臨床に特化した構造化面接(たとえば、SCID(Structured Clinical Interview for DSM. DSMのための構造化臨床面接)やPSE、DISなんての)や質問紙(MMPI, BDI, GHQなど)もあり、用途によって使い分けが必要です。
もしもテストを施行することになったら、先ほどあげたような点に注意をしながら、行っていただきたいと思います