心理学のお勉強

知覚心理学

視覚−明暗・色彩


知覚心理学において「視覚」というのは、ほぼ永遠のテーマとも言うべきものです。今回は、その中でもとりわけ見ること、感じることに限定していろいろ書いていきます。

視覚はもちろん、目から始まります。瞳孔や水晶体、網膜というところを通って、その情報は中枢、つまり脳へと伝わるんですが、その神経細胞の一番最初は網膜の一番奥のところに端を発します。

この神経細胞なんですが、なぜだか、変なところに位置します。これについてちょっとわかりやすく、なんかに置き換えて考えてみましょう。

たとえば、電話。あれって普通、壁にモジュラージャックがあって、それに電話つないだり、パソコンつないだりしますね? そして、それが電話線へと伸びていって、最終的には電話局の交換機にまで行く。つまり、自分の家から、遠くにつれて集約するものが出てくるわけです。まあ、これはいいですね。

ところが目では、いきなり自分ちに交換機です。そしてそこから電話線が伸びていって、モジュラージャックになって、電話機になる。つまり、完全に逆の構造で、自分の家に電話はない。変だと思いません?

つまりどういうことかというと、目の表面に脳へとつながる神経細胞があって、その奥に視細胞という目独特の細胞があるんです。この視細胞が受け取った情報を神経細胞に送って脳へと届けるんですが、これだとわざわざ情報が入ってきた方に駆け上がって情報を送ることになるんですね。

何でこんな不合理な、つうか、こんなもんあるから「盲点」が出来るんですが、そういう仕組みをとってるかというと、進化の結果、だそう。実際、これ哺乳類は大体そうなのに、ぜんぜん違う進化をしている魚類は、ちゃんと普通らしいんですね。こんなところにちょっとした進化ミス?が見えたりします

神経細胞と視細胞

この視細胞というものですが、錐体と桿体という二つの感覚受容体です。受容体とは刺激を受け取るところで、つまりは、アンテナみたいなもん。

錐体は明るいところで働きます。つまり、日中はこれが活動しているわけです。細かいディティールを捉えたり、何しろ色を捉えるのに欠かせません。この錐体は3種類に別れ、それぞれが異なる色の受容体です。

これに対して桿体は暗いところで働きます。真っ暗な中でもなんか見えるのはこの桿体の働きで、ディティールをとるのは不得意だし、色も感じられないけど、たった1,2個の光物質でも反応するほど感度は高いです。

これらはそれぞれ目の中に分布しており、網膜の中心にあるへこんでいるところ(ここを中心窩といいます)には錐体が集中、その周りを桿体が取り囲む構造になっています。

これが人間が中心視をする理由になります。たとえば、文字を読んだり、なんか見たりするときって、自分の目の前にその対象を持ってきますね。これを中心視というんですが、昼間の間は細かいディティールや色の情報を得るために錐体を使うため、それが集中する中心窩、つまり、目の真ん中のほうにそれを持っていこうとするわけです。これ、まさに中心視。

これに対して暗いところでも働く桿体には、細かい機能は余りありません。その代わり、暗いところでも何かの情報を得られるよう、目のいろんなところに分布しているわけです。

このような暗いところでも明るいところでも働く細胞によって、星などの「10のマイナス4乗」ほどの明かりから、「10の4乗」ある太陽の光まで、幅広くいろんなものを見ることが出来るんです。

錐体と桿体の配置

これに加えて目のもうひとつの特徴は、色が捉えられることです。そしてその機能は錐体にあることは今説明しました。では、具体的にはどんな感じなんでしょうか。

さっきも書いたように錐体は3種に分かれます。これはそれぞれ赤(R)の波長に反応するもの、緑(G)の波長に反応するもの、青(B)の波長に反応するものと分かれます。

たとえば、ある光が届いたとき、それぞれの錐体細胞は自分の受け取るところと光の波長が近ければ、興奮の波を起こします

このとき起こる現象は美術でやるところの「色の混色」です。例えば、赤が30、青が200、緑が90という感じで届いたなら、それが混ぜ合わされて「黄緑色」みたいな色が出来上がります。

例えば、日光は普通白いです。これはいろいろな色が混ざっているからですが、受け取る側としては、赤も、青も、緑も、最大なんです。このとき、それって白なんですよね。もしなんか実感わかないなあ、と思うなら、Adobe Photoshopかなんかで、RGBそれぞれ255な色を作ってみてください。白なはずですよ。

Photoshopのカラーピッカー

そんなわけで、このRGB混色という方法は、パソコンのモニタにも使われています。たった3色で莫大な数の色を表現できるこの方法は、とても便利だからです。それが人間の体では興奮のレベルデータとして脳に伝えてる。すごいですね。

ちなみにこの方法は最初ヤングという人が述べ、それを後にヘルムホルツという生理学者がまとめたために「ヤング・ヘルムホルツの三色説」とか言ったりします

でまあ、これで色を脳へ送るるんですが、実はまだ仕掛けがあるんです

それが反対色にすること。これは赤の色は緑に、青の色は黄色に、そして白は黒に変換するシステムが実はどうもあるらしい。それはどうも、色覚異常のパターンからも言えて、もちろん、その逆もありそうだ、という「ヘリングの反対色説」ってのがもとです。

で、実際に「赤、緑」「黄、青」という変換はもう見つけられています。それによると、それぞれの錐体からやってきた興奮の波は、それが合流するところ、つまりインターチェンジみたいなところで、必ずしもすべてが興奮として働くわけではなくて、あるものは抑制になるらしいんですね。もちろん、その逆の抑制が興奮に変わることだってあるわけです。するとトータルとして、結局は興奮の波は抑制に変わるか、またはその逆が起きてしまう。すると、入ってきたデータは最初とはまったく正反対にひっくり返ってしまって、結局変換が起きるらしいんです。

まとめれば、目の入り口の段階では前の「混色」で色を捉え、そしてそれがまとまるところでは「反対色」を使ってさらに精緻化する、そうしてデータを脳に送る、とこういうような仕組みで色は判断されるらしいです。

なんと複雑。しかも、この色ってのは、首の付け根のうえのほうにある大脳皮質の第4次視覚野(V4)で、さらに処理されるらしい…。うーん、色ひとつで大変です。

もちろん、色だけじゃなくて輪郭の特徴なんかも脳でばったばったと処理されます。ただ、まだわからないことも多いので、今のところはこの辺でおしまいにしておきましょう。

視覚はまだまだ続きます…。