cafe de psyche

秋の空と論文指導。(05年9月)


あらま、いつの間にか秋ではありませんか!げげーっ!

というわけで、めちゃくちゃ作業が怠っております、当研究室でございます。毎日のように更新してた時期が嘘のように今や波も凪ですな(ちょっと韻踏んでみた)、という感じでございますが、ゆるゆると続いておりますので、今後ともよろしく。

ということで、もう明日は10月という切羽詰った状況。卒論、修論書きの皆様はいかがお過ごしでしょうか。というか、この時期のせいか、卒論相談系のメールが急激に増えている昨今です。「大学の歩き方」であれほど1年位前から準備しなきゃと書いたでしょ!という感じですが、今言えることは、現在大学3年生の皆様は遊んだりバイトもいいですが、卒論のことを頭の片隅のどこかに招き猫の如く置いてあげてください(にゃあ)、ということ。先輩が苦しんだ、その道を自ら踏むことはありません。

心理学の場合、実験や調査というのが研究方法のメインとなるわけですが(歴史を紐解こうとか思わない限り)、こういうことやるにはかなりの事前準備が必要です。

例えば、アンケートをちょっと取って分析してみるか、なんてよくあるケース。もし、アンケートを作るというところからやるとなったら、こりゃ、相当な時間がかかります。

まず、何を調べたいのか考えなきゃいけない。当たり前だけどね。その上で、どんな質問するか、具体的に項目にしていかなきゃいけない。

心理学で行う調査の場合、質問紙に並べる項目というのには「信頼性と妥当性」というのが引っかかってきます。つまり、その調査をやるのに適切でない項目を載せるわけにはいかないし、ちゃんと聞きたいことが聞ける項目でないといけない。

これを作る作業ってのは決して楽なものじゃありません。質問紙を作ったことがある人ならわかると思うけど、微妙に大変。まあ、卒論レベルであればめちゃくちゃ精緻なアンケートを作る必要はないといえなくもないですが、それでも一応、論文を書くわけで、そういうことに気をつけだすと、「あれ、この項目、この文章でいいのかな」とか出てきちゃうんですよ。日本語って、ほんとちょっとした「てにをは」の違いで変わってくるからね。

どこかで使われた質問紙を使いまわすのならば、このステップは減るわけですが、とはいえ、調査の大変さはあまり変わらない。

卒論で調査をやるとなると、多くの場合で、大学の講義の時間中に紛れ込んで、ちょっと答えてもらう、とかいう形になるかと思います。これがね、また難しい。

まず当たり前なことに、人がいないとできない。つまり、講義をやっている期間中でないと、答えてもらえない。これはこの夏あたりから卒論の準備を始めだした人には大きく響いてるんじゃないかな。そうなのです、春先からちゃんと準備してあれば、夏休み前までにデータが揃えられたのに、そこを越してしまうと、もう、秋にならないとデータが手に入らないのです。こりゃあ、データ解析とか執筆に大きく影響すること間違いなし。

第一、講義の時間中に答えてもらうってことは、ちゃんと先生とかに言って、許可を取らなくちゃいけないってことです。論文にしようとすると2、300人のデータが必要になるものですが、それだけのデータを取るためには、結構、いろんな講義に紛れ込まないといけなかったりする。その度に先生に「オッケー!」といってもらわなくちゃいけないのです。

心理学関係の講義であれば、まあ、先生も知り合いが多いでしょうけど、学部学科を越えてデータ取ろうなんてなると、「あの先生は今出張中ですよ」「今日は来ませんよ」とかで会えないことすら出てきたりする。となるとやっぱり、早い時機から動いて損はないといえます。

ていうか、今、現在、心理学が属する学部学科だけで調査をやろうってのはちょっと無理がありますな。学生の男女比がめちゃくちゃだもの。男性数十人、女性数百人とかいうのが当たり前にあるでしょう?(特に臨床系は) 講義室入ったら女子しかいねえ!では、ちゃんとした研究は出来ません。男女比が落ち着いている一般教養系(外国語、特に英語とか)とか、他の学部学科でデータ取ったほうがまともかもしれない。

調査って面倒くさいですよ。アンケート用紙を用意して、ばらばらにならないようにホチキスで留めたりとかしてさ、それを持ち込んで答えてもらってさ、面倒面倒。特に、お金がかからないようにやろうとすると、作業がほとんど個人一人に襲ってきますから(それこそ、ハリケーンのように)、ここらあたりで無我の境地に達したり、悟りを開いたりすることがあります(繰り返し繰り消しホチキスを打ったりなんかすると、特に)。

でまあ、ようやくデータが取れたとして、今度はそのペーパーのデータをデジタルに移さないといけない。これがまた厄介です。数百人のデータを手で打ち込むってのは、かなり難儀。そりゃ、センター試験はマークシートだわ、と実施者側の気持ちが理解できること請け合いです。何でこんなに項目数増やしちゃったかなあ、とか、ひとりでキーボードに向かってると思ったりして、気苦労が耐えない作業です。

ていうか、ひとりでの作業は、どんなものでもつらいですな。

苦労してデータを打ち込んでも、今度はそのデータに打ち間違いがないかチェックするのがこりゃまた面倒だったりする。マークシートって神様だなあ、とまたここで実施者側の気持ちが理解できること請け合いです。

データ打ちが終わったら、解析だ。Excelでささっとやったり、SPSSでバシッとやったり、ケースはいろいろですが(やりたい内容によって変わってくると思う)、この結果次第では、「あんたのやったアンケート、意味なしっ!」となりかねなかったりもするから、さあ大変。まあ、そのくらい予想して研究課題を組むものですが、予想と違って「関連なし」とか「相関なし」とか出ると、結構、へこんだりするし、その後、言い訳を考えなくちゃいけなかったりして、大変になったりする。

実験なり調査にある程度見切りが付いてきたら、それと同時に論文を書き出さないといけない。個人的には「研究方法→結果→考察→一番最初に戻って、目的」と書くのが楽でいいのですが、「目的」から書き出さなきゃダメッ!って強く言い切る先生もいるらしく、そういうケースでは、この目的の段階でひと月くらい過ぎてしまうこともあるようです。

そりゃそうだ、一番書きにくいところだもの、目的って。

心理学って、独立変数と従属変数の間に潜む「潜在変数」を考える学問ですが、目的ってまさにこの潜在変数でしょ? 研究したその理由、動機とかを語るんだもの。過去の先行研究を説明したりなんだりってのは、潜在変数ではないから、まあ、ある程度調べたり、見聞きすれば書けるけど、何で自分がこの研究をしたいのか、その動機を簡潔に語る!ってのは、胸の内を語るのと同じで、意外と難しかったりするのです。客観的に述べればいい、研究方法とか結果とかに比べたら、えらい大変。

卒論だとだいたい原稿用紙にして100枚くらいなわけで、そうすると、この目的だけで原稿用紙10〜20枚くらいはいかないといけない。4000字〜8000字ですよ。これ、小学校の頃から作文は大嫌いだった、ってな衒いの人には、拷問ともいえる量かもしれない(100枚=40000字は地平線の彼方か)。そのくらい、書きなれてないとここは書きにくいのです。

論文ってのはまた、好き勝手に書いていいってものではないので、必ず人から批評される運命にあります。論文指導の主査、副査はもちろん、ゼミやりゃ仲間うちからも槍が飛んできたりする。そうしてブラッシュアップしていくわけですが、これって結構、根気がいる作業です。本当にいい論文を書こうと思うと、相当な時間が必要になることは間違いない。

そんなわけで、卒論とか書くのには結構な時間がかかるものなので、これから書かにゃ、という人はそこは肝に銘じておいてほしいところです。ギリギリになって騒いでも、それこそ、後の祭り。留年すらしかないんですから、気をつけましょう。

そして、現在絶賛格闘中!という私のような皆様は、あとふた月くらいの時間を有意義に過ごして、悔いのない年越しを迎えるようにがんばりましょう(^^;)