心理学のお勉強

知覚心理学

知覚と脳


最近の心理学研究では脳を扱うことが当たり前のように行われています。でっかい機械を使って脳を見たりとか、当たり前なのです。ですから、脳のことを知る、というのはこれからの心理学を理解するために絶対必要なことだといえるでしょう。

ただ、脳が一体どんな形をしていて、どんな部位があって、という生理学的・医学的な話は、絵描くのも難しいし、図柄もこれまた難しいし、名称もなんだかよくわからないものとかが多いので、ここでは避けます。そういうのは、皆さんご自身で調べてください(^^;)

とりあえずここでは、今のところわかっていることを視覚を中心にお話しすることにします。

視覚は脳のいろんな部分、しかも、かなりの部分を使って処理がなされているようです。視覚がどの知覚系よりも優位なのはこの影響があるかもしれません。その中で、眼のニューロン(神経細胞)の話は前に触れましたので、ここではそれとは違う話をしましょう。

まず、眼から脳まで行く、その道の中に注目すべき点があります。それは例えば、右目の左半分は右半球の「第1次視覚野 the primary visual area, V1」に、残りの右半分は左半球の第1次視覚野に行く、というように、妙に交錯した道のりになっている点です。

つまり、どちらの眼も、視野の外側(つまり、こめかみ側)は、その眼とは反対の脳で見ているのです。

しかもそれは、脳の中に入って、また一つになるのです。中継地点、「外側膝状体 Lateral Genuculate Body(nucleus)」というところで再会するのです。

ここがまた面白い構造です。LGBというところは、「右眼→左眼→右眼→左眼→右眼→左眼」と6層構造をしていて、そのうち最初の4つが「小細胞系 Parvo-cellular system」、残りが「大細胞系 Magno-cellular system」といって、どっちもニューロンでできているんですが、このうち小細胞系は静的で定常的な形に反応し、大細胞系ではダイナミックに変化するものよく反応する、と言われているのです。しかも、この部分は両眼立体視や色彩の認識に関係があるらしい。

まあ、このまま書き続けると一気に専門用語&専門知識の嵐になりますので、ここで止めておきますが、まあ、いろいろあるということです。

とにかく、なんだかんだあって、眼で見たものは脳の視覚野、まずは、V1に行きます。このV1の重要な働きは、「像の形の形態分析」(つまり、特徴を読み取る)にあります。

例えば、傾き具合とか、エッジの認識とか、そういうものはここで行われるとされます。ここにあるニューロンは、そのそれぞれの刺激、つまり、傾きとかエッジとかに特異的、選択的に反応するニューロンであって、そしてそれらが連携プレイしていると考えられています。詳細はこれまた書き始めると大変なことになるので、専門書でも読んでください。

V1の次には当たり前のごとく、V2というエリアがあります。このエリアが一体何をやっているのかは実はよくわかってません。どうもV1とともに両眼立体視に関係しているとか、詳細化なんかに関連しているのでは?と考えられています。そしてそのV2の次にはV3があります。ここはV3、V3Aという2つの領域に分かれるのですが、ここはどうも色を除いた特徴の分析に関連していると推測されています(よくわかってません)。

そしてその次にあるのが、どうも色の分析に関連しているらしい、V4です。

色という話題は先ほどの外側膝状体のところでちょっとでてきましたが、これをもう少し突っ込んでみましょう。

今ここで色に反応するニューロン、そいつの「受容野 receptive field」を考えます。この受容野は2つの領域からなり、それは同心円構造をしていると考えてください。同心円構造とは、トイレットペーパーを考えればいい。ペーパーがあるところと芯の部分の2つに分けられますね? これです。

で、この受容野、ペーパーがあるところでは「赤」に反応し、芯の部分では「緑」に反応する、そんな構造になっているようなのです。つまり、光の波長に対して反応するところが違うということ。これは「赤−緑」という反対色の関係ですが、もう一つの反対色の組みあわせ「青−黄」にも、このような仕組みが成り立っていると考えられています。

色をどのように認識しているか、という点で、これは非常に面白い事柄ですね。

ちなみに、「明暗の差による領域の区別」と「色の差による領域の区別」の間には複雑な交互作用があることがわかっています。しかし、明暗による領域の区別のほうが優位だ、ってことがわかっているだけで、メカニズムはまだよくわかっていません。

このように、脳研究というのはまだまだこれからで、わからないことがいっぱいあります(説明が中途半端で止まってしまうのもそのせいだと、ポジティブに考えてください)。

つまり、ここまでのことをまとめると!

V1: 特徴を読む
V2: 詳細化、V1と絡んで両眼立体視に関係?
V3+V3A: 色以外の特徴の認識に関係?
V4: 色を複雑に分析?

そしてこれに加えて、前に「運動視」のところで説明したように、

V5+MT+V5A: 運動視に関連

視覚はこんな感じに分けることができると思います。

具体的な例として、文字の認識を考えてみましょう。アメリカの心理学者ポスナーの実験によれば、意味がない文字列を被験者に対して提示したときは、主として視覚野(特にV1とV3)が反応し、意味がある文字列を提示したときは、視覚野よりも言語野(大脳左半球の前頭葉にあって運動性の性質を持つ「ブローカ野 Broca area」と、側頭葉にあって言語性の性質を持つ「ウェルニッケ野 Wernicke area」のこと。この間は太い神経の束(弓状束)で結ばれている)が中心に動くとの事です。

これはつまり、文字の認識がそれに意味が伴うか伴わないかで、言語野が絡むか否かが変わるということ。これは非常に興味深い結果だと思います。

今回のお話は、さまざまな脳に関する知識がないとよくわからないことが多いと思います。本屋さんとかで探すといろんな本とか出ているので、ぜひ、そういうのを参照してみてください。非常に興味深いことがいっぱいです……。

で、今回は参考になるページをご紹介します。共に英語(URLは長すぎるのでここでは見せてません)です。これは、日本語のサイトよりも英語のサイトのほうがわかりやすい、ということによります。自分で「脳を使って」訳しながら、ぜひ、参考にしてみてください。

その1(英語)その2(英語)