心理学のお勉強

人格心理学

類型・特性・状況論


数多くの人格理論の中で、一番理解しやすそうなのが、この類型・特性・状況論です。多分、一度は皆さんも利用したことがあるかも、というような内容です

類型論というのは、理論や基準に基づいて、多様な人格の中でも特に似たような部分、つまり類型を見出して、その典型を元に人格を理解するものをいいます。

これに対して、人格の持つ要素を組み合わせて理解しようとする立場が特性論で、これには数多くの先駆的研究や質問紙法検査の開発、統計学的手法の発展が影響しています。

まずはこの2つから説明していきましょう。

類型論にはさまざまなものがありますが、その中でも一番よく教科書に載るのがクレッチマーの気質類型論です

この理論は精神病理学に元をおきます。そしてそこから、生理的、体質的特質が基本となる行動反応傾向を気質と捉え、それと体格とを結び付けました。つまり、こういう体格の人は、こういう精神疾患になることが多いだろうと結びつけたわけです。

例えば、やせてどちらかといえば細長い感じのする人は精神分裂病が多く見られ、逆に肥満タイプの人は、躁うつ病(今の言葉で言えば、双極性気分障害)がよく見られるという感じです。

これを一般の人にも置き換えたのが、気質類型論です。クレッチマーによると、分裂気質と循環気質、そして粘着気質の3つが定義され、それぞれ、以下のような特徴が見られるとされます。

分裂気質

1) 非社交的、静か、控えめ、まじめ(ユーモアを解さない)、変人
2) 臆病、恥ずかしがり、敏感、神経質、興奮しやすい、自然や読者に親しむ
3) 従順、気立てがよい、正直、落ち着き、鈍感

循環気質

1) 社交的、善良、親切、温厚
2) 明朗、ユーモアがある、活発、激しやすい
3) 寡黙、平静、陰鬱、気が弱い

粘着気質

1) 粘り強い、頑固、融通が利かない、テンポが遅い
2) 気分は安定している、時々爆発する

これらのうち、1)が基本的な特徴、2)と3)が表面的なものとは対照的な下位類型を示します。

もちろん、ここで使われている用語は病気とは関係ありません。また、体格と気質が関係していとも、規定しているわけではなく、あくまで結果的な話とされます。

このクレッチマーの類型論以外にも、人格のタイプ、内胚葉型、中胚葉型、外胚葉型の3つに分けるシェルドンの類型論や、内向的、外交的で知られるユングの類型論(内向、外向と、4つの心的機能(志向、感情、感覚、直感)を使って類型する)があります。

これら類型論は多様な人格傾向を表現するには無理があるのではないかとか、あくまで特定の一部分だけを類型化しているというような問題も指摘されています。実際、過剰な一般化は避けたほうがよいと思いますが、類型論はあくまで人格をカテゴライズする目的ではなく、人格の本質部分の説明のためのものと考えて、付き合っていけば大きな問題はないでしょう。

類型論に比べて、かなり細かな分析が施されてるのが、特性論です。先ほども書いたように、特性論は構成要素を組み合わせて人格を理解しよう、というスタンスのもので、大きく共通特性論と、個別特性論に分かれます

共通特性論というのは、人に関わらずみな持ってる特性を考える立場です。これに対して個別特性論は、個人個人によって異なるであろう特性を議論していく立場です。

もともと、オールポートという研究者によってスタートした特性論は、最初、個別特性論でした。しかし考えてみれば、個別に異なる特性を測ることは相当難しく、今に至るまで数少ない研究しか行われていません。

これに比べれて、人にみな見られる部分を考える共通特性論は、質問紙とともに大きく発展し、今考えられている多くの特性論は、この共通特性論です。つまり、質問紙の理論的裏づけをしているのも、この特性論であることが多いです

特性論の中でよく注目されるのがビッグファイブで、これは5つの特性で人格を理解しようという立場です。

ビッグファイブは因子分析という統計学的手法が大きく関係しており、その中でも一番有名なコスタとマックレーの「NEO人格目録改訂版」によると、神経症的傾向、外向性、経験への解放性、協調性、そして誠実性の5つに分けられています。

ただ、特性論にも問題がないわけではありません。最大の問題は、そんな特性が存在するのか、という疑問で、特に状況主義(状況論)という、人は状況によって規定されるんだという立場の人たちとは大きく争いになっています。

今ではここから新たなアプローチが生まれています。これは人格特性などの人的要因と、周りの環境とが相互に影響しあって、力動的に働き合っていると考える立場で、新相互作用論と呼びます。

これは非常に新しいポジションで、それによると、
1) 実際の行動は、個人とその個人が直面している状況との間の相互作用過程として現れる
2) 個人は、この相互作用過程における主体的な遂行者である
3) 個人側は、認知・動機付け的要因が行動の本質的な決定因である
4) 状況は、個人にとってどのような意味を持つかが重要である

ただ、この研究は非常に難しく、実証的データが少ししかありません。ただ、これからの新しい人格研究の立場として、注目されます。