心理学のお勉強

人格心理学

行動主義的アプローチ


行動主義は、今の「学習」の基本的な考え方を作っています。ここには古くからの「知識の源は経験だ」という経験主義と、「感覚とそれから生まれる概念の連合が複雑な心を作る」という連合主義、そしてダーウィンの進化論が影響しています。

心理学を自然科学の仲間にさせようとした主義でもあり、ワトソンがその代表者といえるでしょう。

この主義のポイントは、

1) 心理学は行動の科学であり、研究の目標はその行動の予測と統制にある。そのためには意識の内観的研究はふさわしくない。
2) ヒトと動物を区別しない。あらゆる精神主義的な概念は廃止し、刺激(S)と反応(R)というような行動概念のみを用いる。

という点です。行動主義では「無意識」なんてものは考えないし、嫌います。目に見える行動、それのみが心理学の研究対象なのです。この主義については「学習心理学」かなんかをやるときに詳しく説明しましょう。

行動主義の創始者ともいえるワトソンは、人格を理解するとき、生まれてから今までのその人の活動の流れをプロットするよう求めています。また、いろいろな習慣の体系でその人を理解するよう述べてもいます。たとえば、ある靴職人を考えるとき、その人の個人的な知識(着るものとか礼儀とか)の習慣や、レクリエーションの習慣、宗教的な習慣、そして靴作りの習慣などがその人を作り上げ、それが今まで自分にとってみんな優勢だったんだと理解しようというわけです。

ワトソンによれば人格は、長い間に実際に見られる行動の総和で、習慣がまとまった最終産物に過ぎません。この考えのベースは学習であり、ワトソンはその根拠をパブロフに代表される古典的条件付け(レスポンデント条件付け)に求めています。

このようなワトソンの考え方からもわかるように、行動主義は非常に客観的に心を扱います。ヒトや動物などへの実験も数多く行われ、さまざまな発見もなされています。

ヒトに対する科学的実験としては、「アルバート坊やの実験」が有名でしょう。これは生後11ヶ月のアルバート坊やに白ネズミを見せるとき、大きな音を一緒に提示すると、音を出さなくても、それまで怖くなかったネズミが怖くなるというものです。

ネズミが条件刺激という典型的なレスポンデント条件付けなんですが、問題はここから。実験を行ったワトソンたちは、その条件付けを消去することに挑んだのです

具体的な手法は人格という話から越えるので割愛しますが、結果的にはこの消去に成功し(つまり、ウサギを見ても怖くなくなった)、条件付けから人格の変容が言えることを説明しています(ちなみにこれが後の行動療法に発展します)。

このような行動主義には「客観的過ぎる」などの批判が数多くありました。それでも、今の心理学の大変重要な考えのベースになっています。

また、新行動主義というものもあります。ここではえてして、オペラント条件付けが用いられ、スキナーのスキナーボックスによる実験や、バンデューラらの社会的学習、たとえば、見ることが後の行動に影響を与える「モデリング(観察学習)」や、誰かの行動を真似ることで反応が強化される「模倣学習」などが、面白い結果を今に残してくれています。

新行動主義者なスキナーの考え方では、行動そのものが人格です。ですから、行動のすべてを記述できれば、人格を理解することが可能です。ただそれは並大抵のことではありません。行動という面から見ても、人格の理解は大変難しいのです。

ほかにも「学習」という分野からは、ハーローのサルの社会的隔離の実験から、生後すぐに親から隔離した場合と、仲間から隔離した場合では、仲間から隔離したときのほうが後の社会的適応に悪影響を与えるとか、セリグマンの実験から、電気ショックから逃れる術がないイヌと、逃げられるイヌを比べた場合、逃れられないイヌは「学習性無力感(learned helplessness)」から反応性うつになるなど、面白いことがいろいろといわれています。

このような学習をベースにする行動主義的なアプローチも見捨ててはいけません。

※なお、「学習」については、[心理学の基礎「学習と行動」]を読んでみてください。