心理学のお勉強

心理測定法

一対比較法


人間にとって比較的容易に判断できることをもとにデータを作って、そのデータに基づいて心理尺度を構成するのが一対比較法とか、系列カテゴリー法です。

たとえば、ペアの光を見せて、どっちがより明るいかを判断させるとか、そういうのが一対比較法。非常に明るい、やや明るい、どちらでもない、やや暗い、非常に暗いと分けて判断させれば、系列カテゴリー法。

もっと定義的に言えば、一対の比較データから心理尺度を構成するのが一対比較法、カテゴリー判断のデータを下にして心理尺度を構成するのが系列カテゴリー法です。

これらは決して精神物理的なものに限定されません。というか、いろいろなところでよく見ます。食べ物のおいしさとか、映画の面白さとか、魅力的な顔(印象研究っぽいですが)とか、より複雑な刺激に対する心理尺度を構成するためにも用いられます。

さて、このようなデータと心理尺度の間には、弁別過程を表す測定モデルが存在します。これは比較判断の法則やカテゴリー判断の法則がもとです。

提示される刺激に対応して心的反応が引き起こされるとすると、それは、対応はするけど刺激に一意ではなくて、ゆらぎやばらつきがあると考えられます。つまり、各刺激は心的反応の分布に対応します。

ここで、心理測定の対象となっているp個の刺激集合をA={a1, a2,...,ap}とし、各刺激ajに対応する心的反応変数をujとします。もちろん、ujは構成概念のため観測されえないので、潜在変数で、またある分布法則によって分布する確率変数です。

そして今、ajがakより優越する(より明るいとか、よりおいしい)ことは、ujがukより大きいことと同等とします。

また、このuj、ukがそれぞれ、平均αj、αk、σj2、σk2の正規分布に従って分布すると仮定します。

こうすると、刺激ajがakに優越する確率は、正規分布する確率潜在変数ujがukよりも大きい確率として計算でき、これを突き詰めると、「比較判断の法則」

式1

が導けます。左辺はモデル上、真であると想定されている値。この値の観測値は、ajがakより優越すると判断される比率pjkによって、Φ-1(pjk)として求められます(以下、これをyjkとする)。

さて、このままでは観測されうる値よりも右辺にある未知数のほうが多くて、いくらやってもパラメータが求まりません(具体的にはp(p+3/2)個ある)。ということで、潜在変数uの原点と単位を固定し、σj-k2を1として、

式2

という形にしてしまいます。

さて、この式、心的反応uが分布する、ということは2通りの解釈ができます。1つは、個人を固定しても、各時点において、揺らぎうるということ。これは事実からもそういえます。もう1つは、個人がある集団の中からサンプリングされているならば、この分布に従うと仮定できる、という捉え方です。この場合、パラメータは個人の特徴ではなく、集団の特徴を示すので、注意。

実際にここからパラメータを求めるときは、尺度値を推定することになります。推定の際は最小2乗法(yjk(データのばらつき)とαjk(モデル)の差の2乗を最小にする方法)や一般化最小2乗法、最大尤度法(得られたデータに照らし合わせて、モデルがデータに適合するようにする。最尤法)などを用います。

もっともシンプルなのが最小2乗法で、通常はこれで十分。統計的に優れているのは一般化最小2乗法で、モデルが複雑な場合は最尤法が必要になります。データの当てはまりのよさはχ2乗分布なんかを使って判断します(工夫はしますが)。

系列カテゴリー法では、一対比較モデルと同様に潜在変数uとvを考えます。その上で、ujがvgより小さいか等しいならば、カテゴリーg(cg)以下に反応すると仮定します。この発生プロセスがあることが一対比較法との違いです。結果的には、

式3

となり、これが「カテゴリー判断の法則」です。ここのτは境界値で、人によってゆらぎます。

なんか突然難しくなったと思いますが、一番最初に書いた使い方だけ認識しておけばとりあえず大丈夫でしょう。