心理学のお勉強

学習心理学

古典的(レスポンデント)条件付け


今回と次回は学習心理学の中でも、その骨格を担うようなお話、レスポンデント条件付けとオペラント条件付けの話です。今回はその中でも歴史が古い、パブロフ由来の「レスポンデント条件付け respondent conditioning」のお話です。

パブロフの例を出すまでもなく、梅干を見るとよだれが出るとかそういうのがレスポンデント条件付けです。古典的条件付けとも呼ばれますね。

基本的なことは「心理学の基礎」の中の「学習と行動」で既に触れているので、ここではより専門的な話をします。まずは、ここでよく言われる言葉をいくつか説明しておきましょう。

レスポンデント条件付けは一言で言うなら、「条件があってはじめて起こる反射」ということになるでしょう。そのため、これを「条件反射 conditioned reflex, CR」と言ったりします。これに対して、何もしなくても起こるような反応は「無条件反射 unconditioned reflex, UR」として区別します。

無条件反射を引き起こす刺激のことを「無条件刺激 unconditioned stimulus, US」といい、それ自体では反応を引き起こすことができないような刺激のことを「条件刺激 conditioned stimulus, CS」といいます。

よって、「条件反射」は「条件刺激」と「無条件刺激」を時間的に接近させて(これを「接近の法則」といったりします)、何度か対提示(同時に出す)することによって、「無条件刺激」から引き起こされる「無条件反射」を「条件刺激」と結びつける、そして「無条件刺激」によって「条件刺激」を起こさせるようにする、ということになります(なかなか頭が混乱しますね)。このような過程を、「条件付け conditioning」といいます。

パブロフさんの実験を用いるならば、条件刺激にメトロノーム、無条件刺激にえさ、無条件反応によだれが出る、という状況を設定して、このメトロノームとよだれが出るという2つをくっつけるのが条件付け。そしてそれによって起こる反応が、条件反射って事です。

これ、くっつける、ということなので、もちろん、切り離すことができます。そのことを「消去 extinction」といいます。

これに関しては行動主義を唱えたワトソンがやった「アルバート坊やの実験」があまりにも有名です。これは、生後11ヶ月のアルバートちゃんに、「白ウサギを見せつつ、そこで同時に大きな音を与える」ってことをして、まず、ウサギに対する恐怖を植えつけ、その恐怖が白いもの全般に広がる(般化ですね)ことを確認したあと、その恐怖を消してやるということをやったのです。もちろん、実験は成功。

こういう「消去」の考え方は、後に「行動療法 behavior therapy」となって心理療法などに入っていきます。

これらの概念を使うと、前回の話も簡単に説明できます。例えば、CRがよく似たCSに反応するのが刺激般化ですね。自発的回復は、消去されたCRがしばらくして再びCSを提示するとまた出てくるということ。2つのCSの一方にUSを伴わせれば、「分化 differentiation」が起きます。分化は、2つの刺激を区別するということにつながります(一方では反応するけど、一方ではしないんだから)。

さて、くっつけるくっつける、と書きましたが、一体何と何が「くっついている」のでしょうか。

CSとUR(つまり、刺激と反応の間)が結びついているのでしょうか? それとも、CSとUS(刺激と刺激の間)が結びついているのでしょうか?

昔は見た目で理解しやすい「刺激と反応が結びついている」という考えの「S-R連合」が一般的な見解でした。しかし、最近はこれが変わってきています。

簡単な例で考えてみましょう。例えば、天気。今もし夕方で、空が晴れていて夕焼けだったとします。そうすると、明日は晴れだな、と予測できるでしょう。しかし、この予想は実は、4つのパターンの中から1つを選んでいることに注意しなければなりません。

つまり、

(1) 夕焼けあり→晴れ
(2) 夕焼けあり→晴れない
(3) 夕焼けなし→晴れ
(4) 夕焼けなし→晴れない

という、この4つです。

このとき、上のように晴れだな、と思うためには、知識だの過去の経験などを総合して、(1)>(2)、(3)<(4)という結果が導き出されていなければいけません。このように、環境内の事象間における相関関係から判断することを「随伴性判断」と言います。

刺激と反応が結びついていると考えることは、上のパターンの(1)のみを考えているに過ぎません。ですが、実際には、そのほかの3パターンも考える必要があるのです。ですので、「刺激と刺激が結びついている」つまり、「S-S連合」を考えたほうが無難、と最近では言われています。

これを難しく別の言葉で言い換えれば、レスポンデント条件付けは、事象間の随伴性の学習である、ということになるでしょう。

このようなレスポンデント条件付けですが、問題がないわけではありません。特に、接近の法則については必ずしも必要な条件ではない、と言われています。そのお話については、またあとですることにしましょう。