心理学のお勉強

カウンセリング

方法論


いろんな理論があって、いろんな方法があるのがカウンセリングです。しかし、知識は日々新しくなって、生涯学び続けなければならないし、例えばアセスメントとかで大事な精神医学的なもの(例えば、こういう症状のときはこういう疾患だ、とかいうの)は、多分に経験から得るものです。あと、クライアントの話し方とか態度、表情とかから心理的な問題を考えたりするのも、経験しなければまったくわからないものでしょう。

クライアントが問題を意識していない時などはさらに経験が大事になります。確かに、分析的な理論や無意識の考え方といったものはあるわけですが、これも頭で理解しているだけじゃ何にもならないです。他にも、クライアントが職場、学校でどんなことをしているかとか、適応状況はどんなだとか、そういうのも大事な情報ですが、これもどこが大事なのか理解するには経験が大きい、と言えるでしょう。

ということで、カウンセリングの方法というのは、頭で理解できる知識のようなものと違って、経験によるところが非常に大きいです。カウンセラーが自立するには最低5年、しっかりと確立するには10年、20年、さらには一生とよく言われるんですが、それもうなづけます。

知識はどんどんリファインされていく。経験もどんどん必要。これがカウンセラーの現実と理解してください。

ということで、ここで方法と言った場合、比較的決まりきった常識的なこととなってしまいますが、とりあえずそれをここでは述べてみたいと思います。

まず、カウンセリングの最初、導入時は、クライアントの問題をアセスメントするのと同時に、その結果をクライアントに伝えて、何を解決すべきか明らかにすることが求められます。簡単に言えば、「目標」を決めて、それを二人で共有することが必要なわけですね。この目標によってカウンセリングの進め方が変わってきますし、この作業がクライアントの動機づけをさらに強める意味をも持っています。

この段階でもし、他の機関で対応してもらったほうがいいと判断した場合は、ちゃんとコンサルテーションを行いましょう。

さて、単純ではっきりとした目標、問題が一過的、クライアント自身、健康といった場合なら、比較的短期のカウンセリングで済むと思います。ですが、パーソナリティに問題があるといった比較的難しい問題に突っ込んでいくときは、長期間かかることを覚悟しなければなりません。

たとえば、大学生で学校生活に悩みがある、と言ってカウンセリングルームに訪れた場合、それが1つ単位を落としたとか、友達との小さなトラブルに悩んでいるとかだと、短期のカウンセリングになるでしょう。

でも例えば、今ものすごく「うつ」でどうしようもない、とか、もっと深く、本人のパーソナリティと絡んでいたりなんかすると、これは少し、根を据えてやらないといけないな、という感じになります。

この違いはカウンセリングの手法などにも影響を与えてきます。比較的軽いことであれば、話を聞いているだけで終わってしまうかもしれません。しかし、根を据えるとなるとそれなりの心理療法を用いることが考えられてくるわけです。

どちらにしても、カウンセラーに出来ること、出来ないことをちゃんとクライアントに伝えて、クライアント自身で何かしらの結論が見つけ出せる、それを信じて、そしてまた、そうなることをクライアント自身に知らせた上でカウンセリングは始まるわけですが、でもこれは言ってみれば理想形かもしれません。

なぜなら、実際には、お金がないとか、まだそこまで意欲が高まっていないといった理由でカウンセリングに入ることを拒むケースが少なくないからです

そういう時、基本はクライアント本人の意思に従いますが、必要と思うなら「試しにやってみたらいかがですか?」と薦めてみることになります。特に長期になりそうな場合、いろいろ不安とかもあったりするので、そのステップを踏んだ後に治療契約を結んで心理療法に入ることが少なくありません。

もうこれだけでもわかると思いますが、カウンセリングというのは、そのクライアント一人一人によってまったく違うものになります。あるマニュアルに従えば、そのマニュアル通りに結果が出る、といったものではないわけです。

また、ちょっとした方法論を述べると、カウンセリングは必ずしもそのクライアント本人だけで完結するとは限りません。

たとえば、クライアントがもし14、5歳くらいまでの子供だとしたら、親に対するカウセリングも並行して行われるのが普通です。これは言ってみれば特殊なカウンセリングといえるでしょう。

これはもちろん、本人から聞き取りにくい情報を得ることも目的だったりしますが、それ以上に、親が持つ影響力が子供に問題を生じさせてしまうことが少なくない、ということを踏まえて行われています。

子供が不適応状態にあるとき、親はえてして自分に責任があると思っています。ですから、かなり警戒的で防御的です。そこで、「子供のためにはどうすればいいのでしょうか?」といった形で、変容を促していくのです。そしてこれがクライアントである子供の不適応状態の解消につながったりします。

カウセリングそのものの手法も指導や忠告、説得のような「情報の提供系」から、環境の調節、心理療法、技能訓練といったものまで、さまざまな手法があって、これらはそのクライアントがどんな状態にあるのかなどによって何が適用か変わってきます。

やはり最終的には知識と共に経験という話になってしまいます。カウンセリングはそういうものだと理解しておいていただけるといいかと思います。