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DSM-5リリースへ(13年2月)


2013年に大きく変化を迎えるものがあります。臨床心理の人なら一度は名前を聞いたことがあるだろう、というか、このサイトでも名前は出てきている、アメリカ精神医学会(APA)発行の「精神疾患の診断・統計マニュアル」 通称、DSMです。

DSM-IVがリリースされたのは19年前、改訂版に当たるDSM-IV-TRのリリースから既に13年ということで、結構前から新たなバージョンの話は出ていたところ。以下、2万円する現行の書籍の表紙。

DSM

そして今年5月、このDSMが「DSM-5」として生まれ変わる方向になっています。メジャーバージョンアップということで、ドラフトの段階で意見募集が行われたりなんだりしたわけですが、昨年12月に最終稿が承認されたので、特に問題がなければ5月のサンフランシスコで行われるAPAの会議を経て、新たなDSMがお目見えすることが見込まれるわけです。

新たなDSMで一番変化が分かるのが「自閉症スペクトラム Autism Spectrum Disorders, ASD」の取り扱いとも言われています。例えば、今までは「広汎性発達障害 Pervasive Developmental Disorder」のサブグループとして、例えば、アスペルガー症候群やPDD-NOS(Pervasive Developmental Disorder-Not Otherwise Specified)などを設定していたんですが、これをASDとして括ってしまうという

New name for category, autism spectrum disorder, which includes autistic disorder (autism), Asperger’s disorder, childhood disintegrative disorder, and pervasive developmental disorder not otherwise specified.

includeを強調してみた。でもって、そして、診断基準を改変して、コミュニケーションについて問題がある症例については、"Social Communication Disorders, SCD"を新たに新設する方向になっています。こうなると、SCDとはなんぞや、という話になってくるわけですが、APAによれば、

SCD is characterized by a persistent difficulty with verbal and nonverbal communication that cannot be explained by low cognitive ability.
SCDの特徴は、認知能力の低さでは説明ができない言語的、非言語的コミュニケーションの持続的困難さにある。

とのこと。つまり、今までコミュニケーション不全などでアスペルガー症候群と診断されていたケースはSCDに分類されてくるのかもなあ、と予測が立つところです。ちなみに、症状については、

Symptoms include difficulty in the acquisition and use of spoken and written language as well as problems with inappropriate responses in conversation. The disorder limits effective communication, social relationships, academic achievement, or occupational performance.
症状には書き言葉や話し言葉に加え、会話の中で適切でない答えをされた場合(=比喩的な表現など?)での問題に対する理解や使用に対する難しさがある。この障害によって効果的なコミュニケーションや社会的な関係、学力、職業的能力に制限を受ける。

となっているところ。

このほか、個々で見ると「境界型人格障害 Borderline Personality Disorder」の診断基準が複雑怪奇化したなどいろいろあるのですが、一応、まだワーキングドラフトなので、興味のある人は自力で追いかけるという方向で。とりあえず、初夏に大きな動きがある、ということだけは覚えておいたほうがよさそうです。