cafe de psyche

ゲーム「依存?」(07年6月)


最後にコラムを書いてから、半年以上の月日が過ぎてしまいました。特段、その間に何かがあったわけではないのですが、書き付けないと忘れてしまいがち、ということで、久々に書くのであります。

私がひっそりとやっている「Web屋さんのココロえ」というblog、そこのちょっと前に書いたエントリーがありまして、それは、「ネット・ゲームにはまりすぎている人は精神疾患として、DSMの次の改訂のときに入れたらどう?」というアメリカのとある団体が出した提案を取り上げてみたお話なのですが、さっきふとPsycPORTを見ていたら、これとは別に「Video Game Addiction」が載っていたので、心理屋さんとしてちょっとだけ取り上げてみようと思うわけであります。

「〜依存 ... Addiction」と呼ばれるものはこの世に乱発されておりますが、DSMに載るようなレベルで見ても、結構な数があります。「インターネット依存」なんていうのも早々に載ったもののひとつで、これは「病的賭博 pathological gambling」の診断基準をベースに組み立てられていたりする。だからもし、「ネットワーク・ゲーム依存」というのがDSMに仲間入りすることになるとしたら、ここら辺のものをベースに基準が組み立てられるかもしれません(あくまで予測ですけどね)。

ただ、この手の「〜依存」というものが、単独の障害としてみなせるのか、それとも、ほかのものが原因となっていて起きてくるものなのか、については、議論が分かれるところかもしれない。

たとえば、目に見えて「インターネット依存」という状態があったとして、やったらめったら、サイトを見て回る人がいたとする。でも、その見ているサイトがひとつの共通項でくくられるような時(たとえば、うつなときに、うつ関係のサイトを手当たり次第に探すような感じ)、そのときの判断は「インターネット依存」ではやばいかもしれません。

また、いくら「依存」という言葉で表すのだとしても、精神的な依存というものは、それが何であれ、たとえば、インターネットにしろ、ゲームにしろ、身体的依存であるアルコールとか薬剤のような物質的な依存とは若干区別して考えないといけない、というところもあります。

現状、DSMでは精神障害を大きく16個にカテゴライズしています。目次から引っ張るとこんな感じ。

■通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害(Disorders Usually First Diagnosed in Infancy, Childhood, or Adolescence)
■せん妄、痴呆、健忘性障害、および他の認知障害(Delirium, Dementia, and Amnestic and Other Cognitive Disorders)
■一般身体疾患による精神疾患(Mental Disorders Due to General Medical Condition)
■物質関連障害(Substance-Related Disorders)
■統合失調症および他の精神病性障害(Schizophrenia and Other Psychotic Disorders)
■気分障害(Mood Disorders)
■不安障害(Anxiety Disorders)
■身体表現性障害(Somatoform Disorders)
■虚偽性障害(Factitious Disorders)
■解離性障害(Dissociative Disorders)
■性障害および性同一性障害(Sexual and Gender Identity Disorders)
■摂食障害(Eating Disorders)
■睡眠障害(Sleep Disorders)
■他のどこにも分類されない衝動制御の障害(Impulse-Control Disorders Not Elsewhere Classified)
■適応障害(Adjustment Disorders)
■人格障害(Personality Disorders)

今のところ、この中には「依存」という大カテゴリはない。たとえば、現状では「インターネット依存」は「他のどこにも分類されない衝動制御の障害」にカテゴライズされていたりする。impulse-controlのimpulseは出来心、衝動の意味ですね。このカテゴリの中にはたとえば、なんか突然怒りがふつふつと沸いてきて、物を壊しまくったりする「間歇性爆発性障害 Intermittent Explosive Disorder」とかも入っていますから、ほかにくくりようがないところに一応、入れられているというのが現状でしょうか。

当然、この手の「依存」はDSMには含めるべきでない、という声も強くあるところで、ネットワーク・ゲーム依存に関しても、そういう声が活発になってくることかと思います。そもそも、まだDSMに加えると決まったわけではないわけですし、今のうちに少し冷静な議論をしておいたほうがいいかもしれません。

ということで、久しぶりのネタの割にはちょっと濃い内容でした。次書くのが半年後ということにならないように、と思っている今日この頃。