心理学のお勉強

臨床心理学

そのほかの精神疾患


今まで精神疾患についていろいろと書いてきました。今回はそのほかの精神疾患、とくに臨床でよく見られるアルコール依存症について書こうと思います(なお、基本的にアルコール依存とそのほかの物質依存(たとえば、覚せい剤など)は同じものと考えられます)。

アルコール依存とは、お酒に頼りきっているせいで、心身や社会的活動に影響があることを言います。このとき本人は、それが病気のせいだとは思っていません。これを病識の欠如といい、そのため、アルコール依存症は家族や周囲の人が、無理やり病院に連れてこない限り、なかなか治療が始まりません

多くの場合で医師の診断を否定します。これも病識がないことの現われです。また、どんなひどいことをしても、反省しないし、内省しません。飲んでたんだから、と責任転嫁することすら見られます。

性格的にはいつも誰かに頼ろうとする依存性が見られ、未成熟。もちろん、情緒は不安定。甘えが受け入れられないときなど、爆発的な攻撃をして、それが時には人を殴るなど、破壊活動になることもあります。

一般に、言葉と心は乖離しています。ですから、いくら、大丈夫だからと言っていても、それは真実ではなく、逆にかっこいいことを言っているときほど危険です

飲みすぎによる無断欠勤、人間関係の破綻なども深刻な問題です。恋愛の典型的な例では、男性がアルコール依存症の場合、その結婚相手は面倒見のいい女性です。これも依存の現れと考えられており、「母親と息子の結婚 mother-son marriage.」と言われます(つまり、母親に甘えるような気持ちでその女性に接している)。

アルコール依存症は家族の影響を強く受けます。たとえば、お酒を飲んでる夫を見て、妻が幻滅し、自ら働きに出たとする。すると、妻支配的な家庭が作り上げられる。夫は疎外され、さらにお酒を飲む。夫婦相互の葛藤が高まり、攻撃しあう。これが典型図。

また、依存症の親を持つ子供のことを「アダルト・チルドレン Adult Children of alcoholics. A.C.」と呼び、不登校、拒食、性的逸脱など不適応に対するハイリスクグループです(もちろんこれには例外もあります。親が依存症だったその反動で、アメリカ大統領になったクリントンさんという人もいます!)。

アルコール依存症は薬物療法と心理療法を中心に治療しますが、えてして難航します。何しろ、隠れてお酒を飲んでしまうのです。

ですから、自助グループに参加させるとか、集団ミーティングを行うなど、ある種強制的な社会参加が必要となります。それを10年以上続けて、安定が見られれば、ある程度安心できます。

このようなアルコール依存症は昨今、女性、特に主婦の間に増えており、「キッチン・ドランカー」などと呼ばれています。この裏には気分障害が隠れていたり、そのほかの問題があることもあります。周囲が早い段階でその状況に気づき、治療を開始させなければ、身体、精神の両面で危険です。

さて、今まで何回か取り上げてきたように精神疾患には多種多様なものがあります。

今までの以外にも、痴呆症などの器質疾患や、神経性無食欲症(拒食症)などの摂食障害、さまざまな発達障害、掃除・洗濯ができないなどで社会的に話題のADHD(注意欠陥/多動性障害: Attention-Defecient / Hyperacitivity Disorder)、不感症やサディスティック、フェティシズムなどの性障害、放火癖、抜毛癖…。これすべて、DSMに載ってます

でも、あくまでDSM。実際には、症状も複雑かつさまざま形態をとり得ますし、原因不明も珍しくありません。診断も難しいし、治療はその個人個人でオンデマンドです。ですから、1000ページ近くあるDSMもあくまで指針です。

心理臨床の一端にある臨床心理学もそういう意味では、一人一人のクライアントに適切なものでなければなりません。

マニュアル的にただ覚えるのではなく、ぜひ精神疾患をちゃんと理解してください。