心理学のお勉強

カウンセリング

カウンセラーの態度


「カウンセリングって人の話を聴くことでしょう? 簡単じゃん」と思う方、やってみればカウンセリングがどれだけ難しいか、わかると思います。

人って話を聞いていると、どうしても批判的になってしまったり、逆に同情的になったりするものです。

カウセリングはそういうのとはまったく違います。というより、そういうことはもう十分他の人になされていて、カウンセラーはそんなことしないだろう(または、カウンセラーも他の人と同じように批判的だったり、同情しかしないのではないか)と思って訪ねてくるわけですから、やはり、そういう姿勢ではいけない、ということになるでしょう。

それにカウンセラーは、クライアントのちょっとしたこと、例えば、状態の変化(しぐさとか表情とか)を常に見て査定する観察眼も必要とされます。これをサリヴァンは「関与しながらの観察 participant observation」と呼んでいますが、言ってみれば、身を入れて話を聞き、関わりながら、変化を直感で感じ取る力が必要ということでしょう。

ということで、カウンセリングは難しいのです。

さて今回は態度についてなのですが、ここでまず大前提として、カウンセラーには人に対する興味とか、共感性が必要だということを改めて触れておきたいと思います。これがない場合はそもそも素質として欠けると言ってもいいでしょう。

ちなみにこれらは生まれつきのものではなくて、えてしていろんな経験だったり、本を読んだり、映画を見たり、とにかく、いろんなことに触れることで、ある程度、感受性を高めていくものです。心からの共感とクライアントが自己表現できるようにもって行く、その「受容的・支持的態度 acceptance and support」、傾聴する態度というものもトレーニングによって身につけていくところが大きいでしょう。

それによく大事とされる、「受身的・中立的態度 possivity and neutrality」というのも、カウンセラーが自身を自己洞察したり、自分反省したりしていく過程の中で身につけていくことが多いです。

とはいえ、それは基本的には「人間に対する興味」の上に成り立つものです。そういう意味では根本的な部分に、この「興味」が必要だということが出来るでしょう。

で、これらは言ってみれば方法論的なことなのですが、理論的にはどうでしょうか。

クライアント中心療法(今でいえば「PCA person centered approach」)のロジャースの考えを基にすれば、カウセリングは治療ではない、となるでしょう。クライアント自身が、自分の力でよくなっていくと考えるからです。ですから、カウンセラーも、それにあった姿勢や態度を取っていくことになります。

ロジャースによれば、第一に、カウンセラー自身が安定していること、これを「自己一致 congrant」といいますが、それが大事だ、としています。この自己一致はヒトとしての経験(たとえば、感覚とか)と、自分が得てきた概念との間にズレが少ない状態を指し、言葉を変えれば、自分を信じている、といってもいいでしょう。

そしてその上で、クライアントに対して「無条件の肯定的関心 unconditional positive regard」を持つことを求めています。これは利害を前提に相手に関心を持つのではなくて、たとえば、恋人のことをもっともっと知りたい、そんなときのように、「知りたい」という気持ちで相手と接することです。これによってクライアントは縛り付けられている「価値という条件」から解放される、としています。

クライアントの「内的枠組み internal frame of reference」を「共感的に理解する empathic understanding」といったことが求められるのも、この中から出てきたことで、また、そうして理解したいことをクライアントに伝えることが重要です。

例えば、ものすごく人に気を使うクライアントがいて、その具体例を聞いていると自分には窮屈だな、と感じたら、その通り「それは確かに必要なことですけど、そこまでするのは私には窮屈ですね」と言ってみる、それが大事とされています。

こういうやり取りをするためには、カウンセラー本人が自己開示できないとダメですし、そのためにはやはり、自己一致をしていないと問題があります。このロジャースの考え方は、カウンセリングをするときの基本的な態度を示したものといえるでしょう。

ちなみに、治療同盟といったものや、聞く側が余分な刺激を与えないような座り方、クライアントの全てが問題なのではなくて、カウンセリングに来てくれたというその可能性を信じる、どんな話題にも平等に注意を払うといったフロイトの考え方もかなりの部分、カウンセラーの態度を考える上で役に立ちます。

さて、現実的なカウンセラーとクライアントの関係ですが、これは制限されたものということができるでしょう。ある一定の時間(えてして、50分)、ある枠組みの中だけで成り立つ関係だからです。

一応言っておきますが、一緒に食事をするとか、気になるからといって買い物に付き合うなんていう、そういう日常を共にするようなことは一切許されていません。カウンセリングと友達関係の大きな違いはここにも見えます。

それに、いくらカウンセラーの自己開示が必要だからといって、個人的な状況(例えば、連絡先とか)を明らかにしたりはしません。これを「匿名性 anonymity」といいます。このどのくらいに明らかにするか、ということは、個人によって、学派によって異なりますので、注意が必要です。

また、生徒がクライアントで、先生がカウンセラーのような「二重関係」、これの端的な例が、身内を相手にするということですが、これも絶対禁忌。名誉だとかの成果を狙うようなことをしたり、過剰にクライアントに接したり、そういうこともアウトです。

そして、ここが難しいところなのですが、もし、カウンセリングの中で、カウンセラーがもつ悩みに触れられたとしても、その場では抑えて、決して不安定になってはいけない、ということがいえます。

このように、カウンセリングの際にはかなり気をつけなければならないところがある、ということを知っておいてください。

その上でもし、クライアントに反感を持たれるようなことがあったとしたら、そこはどう切り抜けるのか、カウンセラー自身のあり方そのものにも関わってくることになるでしょう。

このように、カウンセリングはとても難しい、と理解していただければと思います……。

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