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愛の心理学(2004年7月)


日本心理学会という、心理学系としては日本最大、かつ、最古の学会が出している一般向け啓蒙誌「心理学ワールド」ってのの、最新号の特集が、実はこれ「愛の心理学」なのです。ほら、この通り↓。

心理学ワールド・表紙

同じ学会でも、「心理学研究」というお堅い、難しい、学術的な投稿論文を緻密に審査した上で載せている、つまり、いかにも「学会誌」的なものとは、全然メインテーマが違うというか、なんていうか、こうやって「どかん!」と「愛」の文字がきますと、結構新鮮なもんですな。

まあ、「愛 love」と一言でいった場合、そこには「恋愛 love affair」もあれば、「家族愛 love of one's family」もあるわけで、この特集でも、その両方向を取り上げています。目次をぱらっと見てみると。

心理学ワールド・目次

まあ、この雑誌の目的はあくまで「啓蒙」つまり、「人々に新しい知識を与え、教え導くこと。」(大辞林より)にありますから、実際の研究事例やその結果などにはほとんど触れていません。ガイドを引く程度の内容と考えればよいかな。

でもね、「恋愛心理学」のように、同じ心理学をやっている人たち(例えば、認知や知覚などの基礎分野とか)でさえも、あんまり良く理解していないっていうか、正直、なんだそれ! そんなもんやってんのか!とか思われる分野を、こうやって大きく取り上げたことに意義があると思ったり。

興味深かったのが、2000年以降、社会心理学分野で「恋愛」をテーマとした学会発表が(しかも、国内で)急激に増えているという指摘。学会誌に掲載されていないので気づきませんでしたが、ほう、そうですか、と思いました。

しかも、「1990年代後半から恋愛中に起きる心理現象や、失恋や告白という恋愛に特有な現象に焦点をあてた研究が多くみられるようになった」
(松井豊, 2004, 恋愛の心理学研究の現場から, 心理学ワールド, 25, pp.6)
  ↑論文を書くときにやる引用文献の示し方です。

これには多分、大学の心理学系に女子が殺到している現実がいくらか関係しているのでは、と私的に推測してみたりしています。その手のことに一番興味がある人たち(まあ、一般の大学生であれば、18〜22歳の女子ってことですな)が、心理学というフィールドに飛び込むわけで、やろうと思えばその手の研究、できる状態にある(しかも、あんまり大きくは開拓されていない分野であるから、ある意味やりやすい)。心理学が大きくブームを迎えることになる、1990年代に入ってから、このような傾向が見られることも、なんか意味がある気がしますね。

ま、このようにいろんな意味で興味深いテーマを取り上げている今回の「心理学ワールド」なのですが、この雑誌、残念ながら書店では扱われていません。だから、普通の人がさくっと読むことはなかなかできない。

ま、現役大学生とかなら、立場生かして、図書館で探してみたりすると、結構蔵書されているかもしれません(うちの大学のOPAC(蔵書検索サービス。Online Public Access Catalogの略)ではヒットしませんでしたけど)ので、暇だったら立ち読みしてみると面白いかもです。

しかし、冨永みーなさん(わかる人にはわかる方)にエッセイを依頼したこの日本心理学会、いろんな意味で、すごいなあ……と思った(否定的コメントではありません。むしろ、ポジティブな意味で発言しています)。